古い車輌の写真

下松工業高校のサドルタンク

下松工業高校のサドルタンク

RM004 Web#=30 掲載2008/1/1 修正1 2012/6/18

私の大好きな軽便蒸気機関車の中でも特に好みの小型サドルタンク機があると聞いて山口県にある山口県立下松工業高等学校を訪問したのは1972/5/7のことでした。写真でご覧の通りこの頃は野天で雨ざらしでした。でも塗装などの手入れは定期的にされて、大切に保存されていました。リベットのアタマを銀色に塗っていたのはチトいただけませんでしたが。

1907年?に東京石川島播磨重工業の前身、石川島造船所が製造した5.5tのBサドルタンクで、アメリカ製のコピーです。徳山の海軍練炭製造所(のちの海軍徳山燃料廠)で使われていたようで、1934年に教材として旧制下松工業学校に払い下げられました。
金田茂裕氏の「ボールドウィンの小型機関車」機関車史研究会刊行P14〜16に詳細なレポートが掲載されています。それによるとボールドウィンの4-6Cクラスを石川島造船所(臼井茂信氏の機関車の系譜図P416〜417)が僅かにスケールアップして1907年頃に模倣製作したもののようです。
仕様は重量5.5t、シリンダ152X305o、使用圧力10.5atm、動輪直径610o、軸距1016o。

1981年に同校創立60周年記念事業として、先生と生徒の手によって修理復元されました。校庭に仮設された線路で動かされましたが再び静態展示となりました。数年後下津井電鉄がこれを活用しようとして、この蒸気機関車を借り入れて下津井駅の構内に敷設された専用の軌道上で運転されていました。下津井電鉄の廃止に伴い返却されましたが、その後にも下松市や日立製作所のイベントなどで運転されることがありました。その後でボイラに問題が発見され、静態保存に戻ってしまいました。そして下松市に寄贈され市役所横のガラス張りの保存施設に収容されていました。

そのあと、三岐鉄道北勢線の沿線で結成されたボランティア団体に貸し出され復元整備(ボイラー検査合格です)の上、阿下喜駅で動態保存蒸気機関車としてまた活躍が始まりました。今はキャブとサドルタンクがダークグリーン、煙室とドーム、下回りが黒、エンドビームが赤、煙突のキャップとサドルタンクの飾りの線が金色というきれいな塗装になっています。

この蒸気機関車は保存するのに手ごろな大きさだったのでしょう、そしてかわゆい! あちこちで煙を上げて走るところを見せて、たくさんの人々に喜んでもらっているこのロコは、数ある軽便機関車の中でも一番の幸せ者と思います。最近撮影されたカラフルな写真も持っていますが、著作権の関係で勝手に公開できません。

この蒸気機関車は本当に幸運に恵まれていますね。海軍の練炭工場で働いていたからアメリカ軍のB-29あたりに爆弾で吹き飛ばされていてもおかしくはないのです。でも無事終戦を迎えてスクラップになるところを教材として生き延び綺麗な塗装で保存です。人間万事塞翁が馬、SLも万事塞翁が釜。希望を持って生きなさいということでしょうか。

最近では大宮に出来た鉄道博物館に綺麗な姿で展示されていました。その後下松市へ返還されましたが、現在(2012年)は再度の動態復元を目指して下松べんけい号を愛する会がリストア作業を頑張っているところです。

       前のページ 次のページ軽便鉄道