TR1
RP447 Web#=681 掲載2012/1/10写真1、2、4はTR1、1966/6/22、写真3、5、6は1971/9/1南海電鉄阪堺線我孫子道車庫。 南海電鉄阪堺線我孫子道車庫には3台の車籍を持たない車輛があります。1台は前ページのデト11、もう1台はこのTR1、そして次回で取り上げるTR2です。

1944年に南海電鉄阪堺線我孫子道車庫で電車を移動するための大和川分工場(当時)自家製機械扱いの構内牽引車として作られました。都会地で狭い敷地の我孫子道車庫では、トラバーサー・ピットの先の線は四輪単車程度の短い有効長しかとれませんでした。工場の建屋から無動力の電車を牽き出してトラバーサーに載せるためには、どうしても短い牽引車が必要だったわけです。

戦前はその入換作業を2輌在籍していた四輪単車の散水電車で実施してきました。1944年にその内の1輌が他社に譲渡されることとなり、在庫していた資材や部品を流用して内製されました。その「自作電気機関車」は戦時中の中断を挟んで1950年にやっと完成しました。

設計認可の要らない構内牽引車だったので、お手軽に改造工事が実施されたことと思います。写真3、5と6は1971/9/1に撮影したものですが、1966/6/22に撮影した写真1、2、4と比べて、大きな櫓が追加されているのに注目してください。

TR1も営業用の電車と同じ様にダークグリ−ンと薄いクリーム色という一人前の新塗装を施されていました。しかしヘッドライトが無いために鉄道車輛ではなくて構内牽引用の機械設備と言うような表情を見せています。現在はダークグリ−ンと白帯という、最古参の161形電車と同じ塗装を纏っています。

関西では阪神電鉄の尼崎車庫に同じような短い構内牽引車がありました。このような車輛は正規の統計や資料には掲載されていないので、車庫を訪問して初めて発見するということになります。立派な電車の間で働く超小型の車輛は模型的に見ても楽しいものです。
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