古い車輌の写真

花巻電鉄 4 馬面電車

デハ3

RP080 Web#=147 掲載2008/6/12

さて有名な花巻電鉄の馬面電車です。木造のデハ5は最後は作業用でしたので、半鋼製のデハ1、3、4の方が長く活躍した代表でしょう。開業時に用意された初代のデハ1と3は1931年に起きた車庫の火災で廃車となりました。同じ番号で1931年に雨宮製作所で半鋼製ボギー車として代替新造されました。このデハ3は花巻市材木町公園(JR花巻駅の南西約500m)に静態保存されています。屋根付きで金網に囲まれた場所に保存されているのと、最近塗装の修繕が行われたので状態は極めて良好です。ただし前照灯がおかしな半球形のプラスチックカバーを被せられているのは残念です。

車体の寸法や機器の仕様は先に雨宮製作所で新造された木造ボギー車のデハ4や5と同じでした。電車の全長10054mm、全高3085mm、車体幅1550mm! 車輪の直径が864mmと大きいのは冬季の積雪からモーターを守るため(モーターに位置を高くした)でした。車体の先端部分が絞られているために、細面の電車がますます細く見えてしまいます、横から風が吹いたら倒れそう。

デハ4

デハ1や3に先立って木造車体で新造されたデハ4も1931年の車庫の火災で被災し、デハ1と同じ半鋼製の車体を新造しています。

この巾が異様に狭い電車は鉄道ファンの間で馬面電車とかハーモニカ電車などと揶揄されていました。花巻電鉄は電灯会社(花巻電気)が余剰の電力を販売するために設立されました。狭い田舎の街道に建てられた電柱に架線を張り巡らせたため、車輌限界がとても狭くなってしまったためです。戦後に建築限界が拡幅されたために、鉄道線の一人前の巾(それでも軽便電車だから狭い)を持った電車が運行できるようになったので、このハーモニカ電車は出番が減ってしまいました。

このシリーズの電車は定員が50名もありました。車内の写真から吊革というとんでもないものがぶらさがっているのが見えます。両側のロングシートに人が向かい合って座れば膝と膝が当たるのですが、どのようにして立席定員(書類上の立席定員は22名!)の人が車内に乗り込んできたのでしょう? 当然出入り口も極めて狭いもので、巾が50cm程度しかありません。体格の立派な人は横向きでないと電車に乗り込むことは出来ません。

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