古い車輌の写真

伊予鉄道本社前の1号機レプリカ

1号機のレプリカ

RP025 Web#=80 掲載2008/2/24

夏目漱石の小説「坊ちゃん」で有名な伊予鉄道(当時は伊豫鉄道)の軽便蒸気機関車です。伊予鉄道の本社ビル玄関に置かれたピッカピカの1号機関車は、後年に作られたレプリカです。

坊ちゃん列車の蒸気機関車はとても人気があり、レプリカもいくつか作られています。本物の1号機は伊予鉄道が経営する梅津寺パークに保存されています。実寸大のレプリカが伊予鉄道本社前と愛媛県総合科学博物館に展示されています。松山の機械メーカー米山工業では走行可能なレプリカが3フィート6インチゲージで作られました。最近は市内線で路面電車に混じってディーゼルエンジンで走る坊ちゃん列車(1/1のスケールモデル!?)も2本運行されています。

レプリカのモデルとなった機関車(1号機と2号機)はドイツのミュンヘン市にあったクラウス社ゼントリンク工場で1888年5月に製造されました。伊予鉄道開業時は型式なんかは無かったのですが、後年道後鉄道と南予鉄道を合併して機関車の種類が増えたときに甲1型と命名されました。

伊予鉄道の非電化区間用主力機関車として1954年の蒸気機関車廃止まで長く(67年間)活躍しました。1930年から始まった改軌工事(762mmから国鉄と同じ1067mmへ広げる)に伴い順次蒸気機関車も改軌が行われました。支線である横河原線や森松線の改軌工事はゲージの変更だけで、建築限界の拡大を伴いませんでした。そのため国鉄からの貨車の直通運転は全く考慮されず、車輌の断面も軽便鉄道の小さい規格が残され、連結器も簡易なバッファー付きの連結器のままでした。

仕様はB型タンク機関車で、重量6.81トン、動輪直径685ミリ、スチブンソン式バルブギア、ゲージは2フィート6インチでした。

当時の価格は9,700円と伝えられています。当時の鉄道用地取得に要した費用が180円だったことを考慮すると極めて高価な買い物だったことでしょう。

ドイツから神戸港を経由して到着した1号機関車は完成品として木箱に梱包されていたようです。陸揚げする際にはクレーンなど無かったため人力で陸揚げされたそうです。

この客車はレプリカではなくて、1号蒸気機関車と共に実際の旅客列車の運用に就いていたホンモノの2軸客車ハ31号です。現在もこの写真と同じ古町工場で保管されています。

春、菜種の花が満開の畑を、このような低くて可愛いオープンデッキの車でコトコト走って温泉に行くのはなかなか愉快な旅だったことでしょう。森松線や横河原線ではずっと後まで、小さなディーゼル機関車がこのような客車を牽いて走る非電化軽便規格で営業されていました。

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